がん・特定疾患の方へ

治療と仕事

患者の皆様が、社会的苦痛から解放され、
自分らしく、前向きに、充実した、職業生活を送ることを目標に
働く意欲のある者が、病気を理由として
就労の機会を逃すことのないように
職業生活を断念することのないように
治療を続けながら、生きがいのある日々を送っていただきたいと願います。

治療と仕事
特定疾患やがん患者の就労問題は医療と社会という2つの分野にまたがっており、複雑です。
社会保険労務士は法律や制度に精通する就労の専門家として、個々の特定疾患やがん患者さんの心身の状態やその家族における職場の状況を把握し、問題の解決を図ります。

就労問題について

解雇

解雇には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められない場合は無効となります。(労働契約法第16条)
がんに罹患したことだけで解雇の理由にはなりませんが、欠勤が多い場合は理由の一つになることもあります。

復職しようとしたら退職を勧められた

退職を勧められたからといって、すぐに退職してはいけません。自分の身体の状態や今後の治療について会社と話し合い、仕事を続けたいことを伝えましょう。退職届を出してしまうと、撤回することは難しくなります。
但し、就業規則で私傷病による休職期間を規定し、期間満了時に治癒していない場合は退職としている会社もあります。
就業規則の休職規定を確認しておきましょう。

労働条件の変更

労働条件は労使双方で決めた約束事です。どちらか一方の意思のみで変更することはできません。もし一方的に変更された場合は理由を尋ねたうえで、合意していないことをはっきりと会社につたえましょう。

パワハラやセクハラなどの労働トラブル

まず直属の上司に相談しましょう。しかしながら、その上司がパワハラの張本人だったり、会社ぐるみということもあります。改善が見込めない場合は、独りで悩まず、是非相談してください。

定期健康診断の受診

治療と仕事
健康診断は企業の安全配慮義務に基づいて行われるものですが、会社指定の医療機関で受診したくない場合は、労働安全衛生法で定められている項目を他の医療機関で実施した検査結果を提出することも可能です。

労働トラブルについて詳しくはこちら

職場復帰にむけて

職場に病気の事を伝えなければならないの?

必ず伝えなければならないものではありませんが、業務に支障ないし制限がある場合は伝える必要があります。
また、治療を続けながら就労するうえで、会社を休む必要もあるかと思います。会社側の配慮を得るためにも、伝える場合には、一歩的に自分を理解してもらうというスタンスではなく、理解を得られるような伝え方、伝えたいこと(どこまで話をするのか)、そして伝える相手を整理してから話をすることが重要です。

経済的な問題について(公的な給付)

傷病手当

病気の理療等により仕事を休職した場合、加入している健康保険組合から給付されます。
・国民健康保険に加入されている方は対象にはなりません。
(給付額)
原則、労務不能の直前の標準報酬の日額3分の2相当額(1円未満四捨五入)が給付されます。標準報酬の日額とは、標準報酬月額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)です。

(給付期間)
待機期間を満たした、欠勤4日目から最長1年6か月の範囲で給付されます。加入する健康保険組合により、給付期間や給付が額に期間の延長や給付額の上乗せが有ります。

・被保険者資格取得前(会社に入社前)にかかった私傷病でも、資格取得後(会社に入社後)にその傷病により休業する場合も給付を受けられます。

・申請は2年以内に行わなければ時効になり、申請できなくなります。

・同一傷病でも再度傷病手当が給付される場合があります
傷病手当金は、同一傷病の場合の支給期間は開始から1年6か月と定めらていますが、癌などの再発の場合、再発までの期間が相当程度あり、また、その間に検査での異常も診られず、特段の症状もないまま、また、再発予防としての抗がん剤等(保険適用)を服用していたとしても通常通りの勤務をしていた場合、再発が、医学的には同一の傷病に基づくものであったとしても、社会的には治癒したものとの考えから、前後の症状を別のものとして法的に判断し、再度、傷病手当金を給付することがあります。

社会的治癒とは、健康保険法での治癒(社会的治癒)と医学的な治癒との概念は異なります。医学的には同一の傷病に基づくものでも、健康保険法では、その間に相当期間に渡って社会復帰を果たしていた場合には、一般的な感覚として、社会的には治癒したものとの考えから、前後の症状を別のものとして法的に判断して取扱うことがある

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障害年金

障害年金は、病気や怪我の状態で認定されるものではなく、その病気や怪我のために、日常生活や就労に支障をきたすような障害が残ったときに、公的給付として支給されます。
もちろん特定疾患や癌に罹患された方も対象になります。
しかし、特定疾患や癌という病気の場合、人工肛門や新膀胱の造設、尿路変更術等、障害年金の認定基準に明記されている場合は問題がないのですが、病気によっては、認定基準に明記されていないケース(病状)のもあります。その場合は、自覚症状、例えば、抗がん剤等の投薬の副作用(一過性のものを除く)による倦怠感、しびれや疼痛、下痢や嘔吐等により、いかに日常生活が困難となっていることが認められた場合は、障害年金が支給されることもあります。
ここで重要になるのが、主治医作成の「診断書」、患者さん本人(代理人でも可)が記載する「病歴・就労状況申立書」の記載内容です。これらの書類において、患者さんが、どれほど日常生活に支障をきたし、困難な状態であるということを、審査する認定医に理解してもらう必要があります。

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労災

業務上の事由により病気が発症した場合に、労働者災害補償保険から給付されます。給付については一時金あるいは年金の形で給付されます。
労災認定された例として、皆さんが良く知っているアスベスト被害による中皮腫や肺がん、最近では、印刷会社に勤務していたが発症した胆管癌があります。

(労災認定された癌)

病名 原因
尿路系腫瘍 ・ベンジジンにさらされる業務による
・ベータ-ナフチルアミンにさらされる業務による
・オーラミンを製造する工程における業務による
・マゼンタを製造する工程における業務による
・四-アミノジフェニルにさらされる業務による
・四-ニトロジフェニルにさらされる業務による
肺癌 ・ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務による
・ベンゾトリクロライドにさらされる業務による
・コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務による
肺癌・中皮腫 ・石綿にさらされる業務による
肺癌・上気道の癌 ・クロム酸塩又は重クロム酸塩を製造する工程における業務による
・ニッケルの製錬又は精錬を行う工程における業務による
白血病 ・ベンゼンにさらされる業務による
肝血管肉腫
肝細胞癌
・塩化ビニルにさらされる業務による
白血病、肺がん、皮膚癌、骨肉腫
甲状腺癌、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫
・電離放射線にさらされる業務による
皮膚癌 ・すす、鉱物油、タール、ピッチ、アスファルト又はパラフィンにさらされる業務による

上記に掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他癌原性物質若しくは癌原性因子にさらされる業務又は癌原性工程における業務に起因することの明らかな疾病

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